老後のお金を積み立てる制度として、iDeCoとNISAはよく並べて語られます。

ただ、この2つは税金が軽くなる場所も、お金を引き出せる時期も違います。最も大きな違いは、iDeCoが原則60歳まで引き出せない代わりに、掛金が所得控除になる点です。 ここでは両者の違いを、公的機関の資料をもとに事実ベースで整理します。


はじめに

この記事は、新NISAをすでに知っていて、iDeCoも始めるべきか迷っている方に向けたものです。

この記事でわかること
  • iDeCoとNISAの違いを、税制・引き出し・上限額・手数料の4点で比べた結果
  • どちらを先に使うかを考えるときの材料(推奨ではなく、条件ごとの整理)
  • 併用するときに見落としやすい点
  • 2026年12月1日に施行が予定されているiDeCoの見直しの内容
結論サマリー

NISAは「いつでも引き出せる非課税口座」、iDeCoは「引き出せない代わりに所得控除が付く年金制度」です。どちらが上という関係ではなく、そのお金を何歳で使う予定かで性格が変わります。

参照した情報源

金融庁(NISA特設ウェブサイト)、厚生労働省(iDeCoの概要・2025年の制度改正)、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)、国税庁(タックスアンサー・改正のあらまし)。URLは本文末尾に一覧で掲載しています。

最終更新日:2026-09-28


iDeCoとNISAの違いを一覧で比べる

まず全体像を表で押さえます。数字の根拠は、このあとの各章で出典とともに説明します。

項目 NISA iDeCo(個人型確定拠出年金)
制度の性格 投資の非課税口座 自分で運用する年金制度
掛金・投資額の所得控除 なし 全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
運用益 非課税 運用中は非課税
受け取り時の課税 課税なし 退職所得控除・公的年金等控除の対象
引き出せる時期 いつでも売却・出金できる 原則60歳から
年間の上限 360万円(つみたて120万円+成長240万円) 加入資格ごとに月額上限が異なる
生涯の上限 1,800万円(成長投資枠は1,200万円) 上限額の定めはなく、拠出期間で決まる
対象年齢 18歳以上 加入資格ごとに異なる(上限は60歳または65歳。下限も資格によって異なる)
制度共通の手数料 ー 加入時と毎月の手数料がかかる

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この表だけ見ると、税制優遇の数はiDeCoのほうが多く見えます。ただし引き出せる時期という条件が付くため、単純に優劣を比べられる関係ではありません。


違い1:税金が軽くなる場所が違う

NISAは「運用で出た利益」が非課税になる

通常、株式や投資信託の運用益には税金がかかります。NISA口座で買った商品の運用益には、この税金がかかりません。

金融庁は、非課税保有期間について「無期限」、口座開設期間について「恒久化」と説明しています。つまり期限を気にせず持ち続けられます。

一方で、NISAには掛金を所得から差し引く仕組みはありません。その年の所得税や住民税が減るわけではない、という点はiDeCoとの大きな違いです。

iDeCoは入口・運用中・出口の3か所に優遇がある

厚生労働省は、確定拠出年金の税制上の措置を次のように整理しています。

  • 拠出時:「加入者が拠出した掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)」
  • 運用時:「運用益:運用中は非課税」
  • 給付時:「年金として受給:公的年金等控除」「一時金として受給:退職所得控除」

国税庁も、小規模企業共済等掛金控除の対象に「確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金」を含めており、控除できる金額は「その年に支払った掛金の全額です」としています。

つまりiDeCoは、掛金を出した年の所得税・住民税の計算に、その年のうちから効いてくる制度です。

ただし所得控除は誰にでも効くわけではない

ここは誤解が多い部分です。iDeCo公式サイトは「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しています。

所得税や住民税を納めていない人の場合、3つある優遇のうち入口の1つは働きません。運用益の非課税と受け取り時の控除は残りますが、「iDeCoなら必ず税金が戻る」という説明は正確ではありません。

※この章の内容は 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」/国税庁 タックスアンサー No.1135/iDeCo公式サイト より


違い2:引き出せる時期が違う

NISAはいつでも売却して出金できる

NISA口座の商品は、いつでも売却できます。しかも金融庁の説明によれば、「商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります」。

売ったら枠が消えるわけではないため、住宅資金や教育資金など、途中で使う可能性があるお金とも相性が取れます。生涯1,800万円の枠の使い方は新NISA 非課税枠1,800万円の仕組みと使い切り方で詳しく整理しています。

iDeCoは原則60歳から。加入期間が短いと後ろ倒しになる

iDeCoは年金制度なので、途中で引き出すことが原則できません。受け取れるのは原則60歳からです。

さらに注意したいのが、60歳になれば必ず受け取れるわけではないという点です。厚生労働省の資料によれば、加入期間(通算加入者等期間)が10年未満の場合、支給開始年齢が段階的に先延ばしされます。

通算加入者等期間 受給開始できる年齢
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1月以上2年未満 65歳

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50代から始める場合、この表の影響を受けます。始める年齢によって「いつ受け取れるか」が変わる点は、事前に確認しておきたいところです。

受け取りは75歳になるまでの間で選ぶ

iDeCo公式サイトは、受け取りについて「原則、60歳から受け取ることができます。受給を開始する時期は、75歳になるまでの間で選ぶことができます」と説明しています。

受け取り方は3通りです。「一時金として一括で受け取る」「年金として受け取る」(5年以上20年以下の有期年金)「一時金と年金を組み合わせて受け取る」のいずれかを選びます。

※この章の内容は 金融庁 NISA特設ウェブサイト/厚生労働省「iDeCoの概要」/iDeCo公式サイト より


違い3:投資できる金額の上限が違う

NISAは年360万円・生涯1,800万円

金融庁の説明では、年間投資枠はつみたて投資枠が「年間120万円」、成長投資枠が「年間240万円」で、併用時の合計は「年間360万円」です。非課税保有限度額は「1,800万円が上限」で、「成長投資枠はそのうち1,200万円が上限」となっています。

対象は「日本国内に住んでいる18歳以上の方」で、利用する年の1月1日時点で18歳以上の成人が対象です。2つの枠の使い分けはつみたて投資枠と成長投資枠の使い分けにまとめています。

iDeCoは「月いくらまで」が加入資格で決まる

iDeCoには生涯の総額上限がありません。その代わり、毎月出せる金額が加入資格ごとに決まっています。厚生労働省が示す現行の拠出限度額は次のとおりです。

加入資格 拠出限度額(月額) 条件
国民年金第1号被保険者(自営業者等) 68,000円 農業者年金の被保険者、国民年金の保険料免除者を除く。国民年金基金の掛金または付加保険料を納付している場合はその額を控除
第2号被保険者で企業年金等に加入していない(公務員を除く) 23,000円 ー
第2号被保険者で企業年金等に加入している(公務員を含む) 20,000円 企業型DCの事業主掛金額と他制度ごとの掛金相当額の合計額が55,000円の範囲内
国民年金第3号被保険者(専業主婦・主夫等) 23,000円 ー
国民年金任意加入被保険者 68,000円 国民年金基金の掛金または付加保険料を納付している場合はその額を控除

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会社員の場合、勤務先に企業年金があるかどうかで上限が変わります。自分がどの区分かは、勤務先や年金の加入状況で確認してください。

何歳から何歳まで入れるかも、加入資格で決まる

上限額と同じく、加入できる年齢も一律ではありません。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)が示す加入資格は次のとおりです。

加入資格 加入できる年齢
第1号被保険者(自営業者・フリーランス・学生など) 20歳以上60歳未満
第2号被保険者(会社員・公務員など) 年齢の下限は置かれていない。原則65歳になるまで(注)
第3号被保険者(第2号に扶養されている配偶者) 20歳以上60歳未満
国民年金任意加入被保険者 60歳以上65歳未満(海外居住者は20歳以上65歳未満)

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(注)iDeCo公式サイトは第2号被保険者を「会社員や公務員等の厚生年金の被保険者」と説明しており、第1号・第3号のような年齢の範囲を示していません。あわせて「65歳以上の厚生年金被保険者で、加入期間が120月以上の方(老齢年金の受給権がある方)は国民年金の第2号被保険者ではありません」と注記しています。

ここで押さえておきたいのは2点です。会社員・公務員には「20歳以上」という下限が置かれていないこと、そして60歳で加入が終わるのは第1号・第3号だけだということです。厚生労働省が公表している現行制度の図でも、第1号・第3号被保険者は60歳まで、第2号被保険者と任意加入者は65歳までとして描かれています。

「iDeCoは60歳まで」という説明を見かけますが、それは第1号・第3号のケースです。会社員・公務員は現行制度でも原則として65歳になるまで拠出できます(老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っている場合などは加入できません)。

掛金は月5,000円から、変更は年1回まで

iDeCo公式サイトによると、iDeCoは「月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます」。

ただし変更の自由度には制限があります。「掛金額は、1年(12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間)に1回限り変更することができます」とされています。

NISAは積立額をいつでも変えられますが、iDeCoは年1回しか変えられません。収入の見通しが立ちにくい時期は、この差が効いてきます。毎月いくら積み立てるかの考え方は新NISA 月いくら積み立てる?も参考になります。

※この章の内容は 金融庁 NISA特設ウェブサイト/厚生労働省「iDeCoの概要」/厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」/iDeCo公式サイト より


違い4:iDeCoには制度共通の手数料がある

iDeCoには、どの金融機関を選んでも共通してかかる手数料があります。国民年金基金連合会の手数料です。

現在の金額は、新規に加入者の資格を取得または資産を移換した際に2,829円(税込・初回のみ)、加入者が掛金を納付するたびに105円(税込)です。

そしてこの加入中の手数料は、2027年1月から引き上げられます。国民年金基金連合会のリーフレットは次のように告知しています。

iDeCo の加入中の手数料が、105 円(掛金拠出時)から 120 円(月額)に変更となります。

適用時期も明記されています。「見直し後の手数料は、令和9(2027)年1月26日の口座引落し分の掛金から適用します(事業主払込の場合も同様)」。あわせて「新規加入時等手数料 2,829 円に、変更はございません」とも書かれています。

このほかに、運営管理機関(申し込む金融機関)ごとの手数料が別にかかる場合があります。NISA口座の口座管理手数料の有無も金融機関によって異なるため、どちらの制度も、実際に使う金融機関の手数料案内で確認してください。証券会社の選び方は新NISAのおすすめ証券会社5社比較で整理しています。

※この章の金額は 国民年金基金連合会「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」 より


見落としやすい点:NISAの損失は損益通算できない

NISAの非課税には、あまり語られない裏側があります。利益が非課税になる代わりに、損失も税務上は存在しないものとして扱われます。

国税庁のタックスアンサーは、次のように説明しています。

非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。したがって、その上場株式等を売却したことにより生じた損失について、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益との損益通算や、繰越控除をすることはできません

特定口座で利益、NISA口座で損失という年でも、相殺できません。NISAで受け取る配当金の扱いは配当金にかかる税金でも触れています。

一方のiDeCoは、厚生労働省の整理のとおり運用中の運用益が非課税です。制度の中で売買しても、その都度の課税は発生しません。

※この章の内容は 国税庁 タックスアンサー No.1535 より


どちらを先に使うかを考える材料

ここからは判断の話になります。どちらがおすすめという推奨はしません。制度の条件から、どういう場合にどちらの性格が合うかを整理します。

判断の軸になるのは「そのお金を何歳で使うか」

iDeCoは原則60歳まで引き出せません。この1点が、ほぼすべての判断を決めます。

  • 10年以内に使う予定があるお金(住宅の頭金、教育費、転職や独立に備える資金など)は、60歳まで動かせない制度に入れると、必要なときに使えません
  • 60歳以降まで手を付けない前提のお金であれば、iDeCoの引き出し制限は実質的なデメリットになりません

「使う時期が読めない」という場合、いつでも売却できるNISAのほうが、条件としては扱いやすくなります。

iDeCoの所得控除が効く条件

前述のとおり、掛金の所得控除は課税所得がある人に効きます。iDeCo公式サイトは「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」としています。

したがって、所得税・住民税を納めているかどうかが、iDeCoの優遇を1つ多く使えるかの分かれ目になります。

向いている人・向かない人の整理

観点 NISA iDeCo
条件が合いやすい人 使う時期が決まっていない/数年内に使う可能性がある/まず投資に慣れたい 60歳以降まで使わない資金がある/課税所得があり所得控除を使える
条件が合いにくい人 その年の税負担も軽くしたい人には、この制度だけでは足りない 近く使うお金しか回せない/課税所得がなく入口の控除を使えない

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これは適性の整理であり、投資の推奨ではありません。最終的な判断はご自身の資金計画に基づいて行ってください。投資の始め方そのものは投資の始め方にまとめています。


併用するときに知っておきたいこと

iDeCoとNISAは併用できます。NISAの非課税保有限度額とiDeCoの拠出限度額は、それぞれ別に管理される制度です。片方を使うともう片方の枠が減る、という関係にはありません。

そのうえで、実務的に効いてくる点が3つあります。

1. 変更の自由度が違う NISAの積立額はいつでも変えられますが、iDeCoの掛金変更は年1回です。収入が変動しやすい人は、変えにくいほう(iDeCo)を先に無理のない額で決めるという順番が考えやすくなります。

2. 手元の現金を圧迫しないか確認する iDeCoに回したお金は60歳まで戻りません。生活防衛資金を確保したうえで配分を決めるのが前提になります。

3. 出口の設計は早めに考える NISAは売るタイミングを自由に選べますが、iDeCoは受け取り方と時期で税金が変わります(次章)。NISAの取り崩しについては新NISAの出口戦略と売り時で整理しています。


2026年12月に予定されているiDeCoの見直し

iDeCoは制度改正が続いています。厚生労働省が公表している2025年の制度改正のうち、2026年12月1日施行予定とされているものが2つあります。

加入可能年齢の引き上げ|国民年金被保険者でない60〜70歳の人が新たに対象になる

まず押さえておきたいのは、これが「加入の上限が60歳から70歳に延びる」という内容ではないことです。現在の要件を置き換えるのではなく、上乗せする改正です。

厚生労働省は現在の要件を、「国民年金被保険者であって、かつ、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない」ことと説明しています。つまり条件は年齢そのものではなく、国民年金の被保険者かどうかです。その結果、前述のとおり現行でも上限は分かれています。

  • 第2号被保険者(会社員・公務員など)と国民年金任意加入被保険者:原則65歳になるまで
  • 第1号被保険者(自営業者など)と第3号被保険者(扶養されている配偶者):60歳になるまで

そのうえで厚生労働省は、改正の内容を「現在の要件に加え、国民年金被保険者以外の者であっても、60歳以上70歳未満のiDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者であって、以下の要件を満たす者にiDeCoの加入・継続拠出を認める」としています。

その要件とは、次の①〜③のいずれかに該当し、かつ老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出も実施していないことです。

  • ① iDeCo加入者
  • ② iDeCo運用指図者
  • ③ 企業年金からiDeCoに資産を移換する者

厚生労働省の加入対象者の区分では、この人たちが新たに「第5号加入者」として置かれます。区分の説明は「60歳以上70歳未満の国民年金被保険者以外の者で、iDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者」です。

経過措置として、施行日から3年を経過する日までの間は、①〜③に該当しない60歳以上70歳未満の人も加入できるとされています。

実際に効いてくるのは、65歳で国民年金第2号被保険者ではなくなった後も、要件を満たせば70歳になるまで拠出を続けられるという点です。「60歳までしか入れなかったものが70歳まで入れるようになる」と読むと、現行制度のほうを取り違えることになります。

拠出限度額が引き上げられる

同じく2026年12月1日施行予定で、拠出限度額が引き上げられます。

区分 引き上げ後の月額
第1号加入者(自営業者等) 7.5万円(iDeCoと国民年金基金との共通拠出限度額)
第2号加入者(会社員等) 6.2万円(企業年金との共通拠出限度額に一本化)

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現在の上限(第1号が68,000円、企業年金等のない第2号が23,000円)と比べると、特に会社員の枠が大きく変わる内容です。

⚠️ いずれも施行予定の内容です。 実際の手続きや適用の細部は、施行時点の厚生労働省・国民年金基金連合会の案内で確認してください。本記事は2026年9月23日時点で公表されている内容をまとめたものです。

※この章の内容は 厚生労働省「2025年の制度改正」/厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」 より


受け取るときの税金に注意(iDeCoの出口)

iDeCoで意外と難しいのが、出口の税金です。ここを知らずに入ると、受け取るときに想定と違う結果になることがあります。

一時金で受け取ると退職所得として扱われる

厚生労働省の整理のとおり、一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象になります。国税庁は、退職所得控除額を勤続年数Aを使って次のように計算するとしています。

  • 20年以下:「40万円 × A(80万円に満たない場合には、80万円)」
  • 20年超:「800万円 + 70万円 × (A - 20年)」

そして退職所得の金額は、「(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2」で求めます。控除を引いたうえで、さらに2分の1になる点が有利に働きます。

ただし、この2分の1計算には例外があります。国税庁は勤続年数が短い場合として、次の2つを挙げています。

  • 特定役員退職手当等(役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応して受け取る退職手当等):退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になり、「上記計算式の2分の1計算の適用はありません」
  • 短期退職手当等(役員等以外として勤務した期間で計算した勤続年数が5年以下で、特定役員退職手当等に該当しないもの):退職所得控除額を差し引いた額のうち「300万円を超える部分については、上記計算式の2分の1計算の適用はありません」

会社の退職金とiDeCoの一時金を合わせて考えるときは、勤続年数が5年以下のケースがここに当たらないかもあわせて確認しておきたいところです。

なお、iDeCoの一時金でこのAに当たる期間をどう数えるかには決まりがあります。実際の控除額は加入の経緯によって変わるため、自分のケースは運営管理機関や税務署で確認してください。

会社の退職金と時期が近いと控除が重複調整される

問題は、会社の退職金とiDeCoの一時金を両方受け取る場合です。同じ期間を二重に控除できないよう、調整の仕組みがあります。

この調整期間が、2026年から変わりました。国税庁「令和7年度 税制改正等の内容」は次のように書いています。

老齢一時金(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金をいいます。以下同じです。)以外の退職手当等の支払を受ける年(以下「受給年」といいます。)の前年以前9年内に老齢一時金(令和8年1月1日以後に支払を受けたものに限ります。)の支払を受けた場合には、次に掲げる退職手当等が退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例の対象とされました。

同じ資料には「この改正は、令和8年分以後の所得税について適用されます」とあります。また、令和8年1月1日前に支払を受けた退職手当等については「受給年の前年以前4年内」が対象と書かれています。

つまり2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取る場合、その後に退職金を受け取る時期との間隔が、従来より長く見られるということです。

年金として受け取る場合

年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。公的年金と合算して課税所得が計算されるため、公的年金の受給開始時期との組み合わせでも税額が変わります。

⚠️ 出口の税額は、勤続年数・退職金の額・受け取る順番・他の所得によって変わります。具体的な金額の判断は、税務署や税理士など専門家にご確認ください。 本記事は制度の仕組みを整理したものであり、個別の税務相談に代わるものではありません。

※この章の内容は 国税庁 タックスアンサー No.1420/国税庁「令和7年度 税制改正等の内容」 より


よくある質問(FAQ)

iDeCoとNISAの一番大きな違いは何ですか?

お金を引き出せる時期と、税金が軽くなる場所です。NISAはいつでも売却して出金できますが、運用益が非課税になるだけです。iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに、掛金の全額が所得控除になり、運用益も非課税で、受け取るときにも退職所得控除や公的年金等控除が使えます。

iDeCoとNISAは併用できますか?

併用できます。NISAの非課税保有限度額とiDeCoの拠出限度額は別々に管理される制度で、片方を使うともう片方の枠が減るという関係にはありません。ただし毎月出せるお金には限りがあるため、生活費や近い将来使う予定のお金との配分は自分で決める必要があります。

iDeCoは掛金をいくらから始められますか?

iDeCo公式サイトによると、月々5,000円から始められ、掛金額は1,000円単位で設定できます。上限は加入資格によって異なり、自営業者などの国民年金第1号被保険者は月68,000円、企業年金等に加入していない会社員は月23,000円です。掛金額の変更は1年に1回に限られます。

専業主婦(主夫)がiDeCoに入る意味はありますか?

掛金の所得控除については、iDeCo公式サイトが「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しています。つまり収入がなく所得税や住民税を納めていない場合、3つある税制優遇のうち入口の1つは使えません。運用益が非課税になる点と、受け取り時の控除は残ります。

2026年12月からiDeCoは何が変わりますか?

厚生労働省によると、2026年12月1日施行予定で、加入できる人の範囲と拠出限度額が見直されます。これは「加入可能年齢が60歳未満から70歳未満へ拡大される」という内容ではありません。現在も、会社員・公務員(第2号被保険者)と国民年金任意加入被保険者は原則65歳になるまで加入できます。改正では、現在の要件に加えて、国民年金被保険者でない60歳以上70歳未満の人のうち一定の要件を満たす人が、新たに加入・継続拠出できるようになります。拠出限度額は第1号加入者が月額7.5万円、第2号加入者は企業年金との共通拠出限度額に一本化したうえで月額6.2万円になる予定です。いずれも施行予定の内容であり、実際の手続きは施行時点の案内で確認してください。

iDeCoを一時金で受け取るとき、会社の退職金と時期が重なると不利になりますか?

受け取る順番と間隔によって、退職所得控除の計算で勤続期間が重複排除されることがあります。国税庁の改正のあらましによると、2026年1月1日以後に支払を受けた老齢一時金については、その後に退職手当等を受け取る年の前年以前9年内に受け取っていた場合が特例の対象になります。金額の影響は個別事情で変わるため、税務署や税理士に確認してください。

まとめ

  • NISAは投資の非課税口座、iDeCoは自分で運用する年金制度で、そもそも制度の性格が違う
  • iDeCoは掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税で、受け取り時にも控除がある
  • その代わりiDeCoは原則60歳まで引き出せず、加入期間が10年未満だと受給開始が後ろ倒しになる
  • NISAは年360万円・生涯1,800万円が上限で、売却した分の枠は翌年以降に復活する
  • iDeCoには制度共通の手数料があり、加入中の手数料は2027年1月26日の引落し分から105円が120円になる
  • 2026年12月1日施行予定で、国民年金被保険者でない60歳以上70歳未満の人が新たに加入できるようになり、拠出限度額も引き上げられる
  • 出口の税金は受け取り方と時期で変わる。2026年1月1日以後の老齢一時金は前年以前9年内が重複排除の対象になる

iDeCoとNISAは、どちらが優れているかを競う関係ではありません。そのお金を何歳で使う予定なのかを決めると、どちらの制度の条件に合うかは自然に絞られます。 まだNISA口座も持っていない場合は、新NISA 口座開設から最初の1本を買うまでの全手順から順に確認してみてください。

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参考情報

最終更新日:2026-09-28 / 次回見直し予定:2026年12月1日の施行内容が確定したとき、および税制改正があったとき


※本記事は「制度の解説」を目的とした内容であり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。 ※投資は自己責任でお願いします。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。 ※税務の取り扱いは個別の事情によって異なります。具体的な判断は税務署や税理士など専門家にご確認ください。 ※掲載情報は作成時点のものであり、最新情報は金融庁・厚生労働省・国税庁・各金融機関の公式情報をご確認ください。


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